国際画像機器展2025

キーマンインタビュー

専門性で支える日本のものづくりと画像処理技術の未来

画像処理×ロボティクスで社会課題解決に挑む、国内最大・最先端のマシンビジョン展へ

国際画像機器展は、今年で第47回を迎え、「国内最大・最先端のマシンビジョンが集う展示会」として、長年にわたり画像処理を中心とした産業技術の発展に貢献してきた。
近年は生成AIやディープラーニングの進化により、製造現場の品質管理にとどまらず、インフラ、医療、スマートシティなど、社会課題解決に寄与する「キーテクノロジー」としてその重要性を増している。
本展では新たに「ロボティクステクノロジーゾーン」を設置し、画像処理とロボティクスの融合による価値創出を提案するほか、セミナーや各種サポート企画を通じてビジネスの可能性を広げる場となる。
国際画像機器展2025の戦略と展望について、展示会事業部部長である内野部長にお話を伺った。

※以下、敬称略にて掲載。

アドコム・メディア株式会社
展示会事業部 部長 内野 義昭 様

― 始めに、国際画像機器展の歴史と特徴について教えてください。

内野 :当社は1964年創業で、元々は研究者の方々との交流が深く、画像処理や光技術といった分野に早期から携わってきました。展示会事業としては1978年に日本で開催された「第13回高速度写真と画像計測国際会議」の併設展として「国際画像計測機器展(現・国際画像機器展)」を立ち上げたことに始まります。
その後も市場ニーズの高まりと専門領域の広がりに支えられ、今年で第47回を迎えるまでに成長しました。現在では「国内最大・最先端のマシンビジョンが集う展示会」をテーマに、ヒト・モノ・コトが出会い、つながる場として広く活用いただいています。


― 他の展示会と比べて、どのような特徴があるのでしょうか?

内野 :最大の特徴は、マシンビジョン・画像処理分野における専門性の高さだと思います。
派手な装飾をするブースは少なく、見た目は小さなブースでも、その専門性や技術は唯一無二の出展社が並びます。
来場される方も企業や研究機関の開発者が多く、その道に精通した専門家が多いです。
いわば「日本の製造業の底力」を感じさせる、そんな展示会です。
また、出展者同士が連携して一つのソリューションを共同で提供するような有機的なつながりが生まれることも珍しくありません。

― 展示会で重視している点は何ですか?

内野 :いつも心がけているのは、ここから「なにかが生まれてほしい」 という思いです。
画像処理という技術を起点に、世の中を変えるような新しいビジネスやコラボレーションのきっかけを作りたいと考えています。
例えば、画像処理とAIを組み合わせたソリューションでは、電力消費を大幅に削減するような社会課題の解決に貢献できた事例もあります。
また、優れた技術を持ちながら発信力で大手に劣る中小企業の方々の技術を、多くの方に見つけていただく場でありたいとも思っています。実際に大手企業が世に送り出す画期的な製品の背景には、当展示会に出展する中小企業の技術があるケースも多いと実感しています。

― 具体的な技術トピックとして、最近注目されている技術を教えてください。

内野 :近年マシンビジョンやロボットビジョンの分野で、産業用カメラやイメージセンサーの進化は目覚ましいです。次世代のFAシステムを支えるキーテクノロジーとして従来の可視光カメラだけでなく、ToF(Time of Flight)カメラやInGaAs(インガス)カメラといったレーザー・近赤外を活用するタイプ、さらには原子力・宇宙産業での活用を視野に入れた耐放射線カメラなど、注目すべき製品や技術がたくさん出てきていますよ。
また、昨今はAIを活用した画像処理による課題解決が広がっていますが、実はこの分野ではAI登場以前から特殊用途でのカメラ開発が進んでおり、例えばハイパースペクトルカメラを使った食品・医療分野での異物検査や良品判定など、当展示会の出展社は多くのノウハウを持っています。
さらに、正確な撮像に欠かせない光源・照明、レンズといった要素技術に強みを持っている出展社もいます。ぜひ、みなさんの目で最新の技術・製品を確かめに来てください。

― AIの活用についてはどのようにお考えですか?

内野 :はい、AIを画像処理に組み合わせる事例はこの数年で一気に広がりました。
特にファクトリーオートメーション(FA)や外観検査の領域では顕著です。
ただ先程もお話ししたとおり、製品に混入した異物を発見することや、良・不良判定においてはAIを用いなくても、従来のルールベースの画像処理で解決できる事例はあります。
AIの活用は、そのもう一歩先にある、なぜそのエラーが起きてしまうのか?どういうタイミングで不良品が多くなるのか?などといった要因分析から改善まで一貫して支援できるソリューションにこそ求められていると考えています。

― 今後の展望や課題を聞かせてください。

内野 :この展示会の価値を如何に分かりやすくみなさんにお伝えできるか、です。
出展各社様の技術が極めて細分化されているため、来場者に「これを見たいならここ」と、簡単にご案内することが難しい展示会です。
そこで、当展示会の見どころを迷われている方には、先ず「聴講無料セミナー」を聞きに来ていただくことをおすすめしています。将来市場に影響を与える技術や取り組みをテーマとした特別招待講演をはじめ、さまざまな分野に強みを持つ出展社セミナーをご用意しています。
さらに展示会場内には「技術相談コーナー」を設置しています。展示会の後援団体でもある日本映像処理研究会、日本インダストリアルイメージング協会、出展社有志の方々に相談員としてのご協力をいただき、こんな事はできないの? こんな製品はないの? など、画像処理等でお困りのこと、疑問に思うことに無料でお答えしています。
みなさんの抱える難問・疑問を解決します。ぜひ、お気軽にお立ち寄りください。

来場者様へのメッセージ

内野 :この展示会は、画像処理のプロたちが集い、技術とアイデアが光る場所です。
一見地味なブースの裏には、日本のものづくりを支える驚くべき技術や製品がひそんでいます。私たちの目標は短期的な数字だけではなく、中長期的に日本の製造業を元気にすること。専門性の高い技術の数々が、未来を変える萌芽となるような、そんな場であり続けたいと思います。来場者様の好奇心や専門性が、新たな出会いや共同作業を生むきっかけに。ぜひ、未来を変えるイノベーションの種を探しに来てください。



【編集後記】

私たちの生活を支える社会インフラや、製造現場の進化に欠かせない画像処理技術。
その最先端技術の発信と専門家同士の濃密な交流の場を担うのが、国際画像機器展である事を改めて確認できた。
同展は「ここからなにかが生まれてほしい」という強い想いのもと、派手な演出よりも「技術の質」を重視し、日本のものづくりを支える中小企業の底力と、課題解決を求める来場者をリアルな場で結びつけようという熱意に満ちている。
AIや非可視光など最先端技術の展示に加え、技術背景を深掘りするセミナー、そして現場の悩みに応える「技術相談コーナー」といった取り組みは、同展が単なる見本市を超え、業界全体の発展と課題解決を支えるプラットフォームとして機能している表れだ。
一見地味なブースに潜む「本物の技術」との出会いが、ここから産業界に新たな潮流を巻き起こす起爆剤となるだろう。



interviewee:
内野 義昭(アドコム・メディア株式会社 展示会事業部 部長)

interviewer:
中村 賢司(展示会ドットコム主宰、グローブコム株式会社)


※本記事の一部及び全部の転載は固くお断り致します。
※本記事の著作権は、interviewee、interviewerそれぞれに帰属します。
※本記事の情報は、2025年11月時点の内容です。
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※No AI Writing(本記事はAIを使っておりません)

セミナー情報

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展示会情報

開催期間 2025-12-03~2025-12-05
開催場所 アドコム・メディア株式会社
公式サイト 展示会公式サイト (外部ページへ)
主催者 パシフィコ横浜